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あめふらし

雨がいつ降り出してもおかしくない空模様である。風は結構涼しいが、歩くとじっとりと汗がにじむ。書きものにも飽きてきたところで、本屋など覘いてみた。George R.R. Martinの「A GAME OF THRONES(七王国の玉座)Ⅲ」(岡部宏之訳、ハヤカワ文庫、2006年7月31日発行)が出ているではないか。毎月のペースで出ている。「暗殺者ブラド・タルトシュ」シリーズ(最新刊「虐げられしテクラ」は7月15日発行だった)の3ヶ月毎と比べると、好いスピードだ。で、この辺りをご紹介すると思うでしょう。違うんだな。梅雨明けはまだだが、気分的には夏。夏と言えば、少々涼しくなるような話でしょう。ところで、ホラー映画「ラブ・サイコ」も7月15日より上映されている。私は怖い話は好きなのだが、映像にはからきし弱い。この作品でも、西岡徳馬氏、大谷直子さん出演の最後のストーリーには参った。

■長野まゆみさんの「あめふらし」(文藝春秋、2006年6月15日第一刷発行)

Nagano01_1妖怪に「なみはぎ」と云うのがいる。そいつに声をかけられると、自分が自分ではないような気になり、最後には誰なのか全く判らなくなるらしい。この作品に出てくるのは「あめふらし」。これはこれで、じっと考えると相当に恐ろしい。「空蝉」に出てくる仲村逸朗は仲村逸朗なのか。「蛻のから」、「こうもり」、「やどかり」、「うろこ」、「わたつみ」、「かげろう」に登場する市村岬、市村峠の兄弟は何者なのか。橘河と名乗る「あめふらし」だけが、実体があるようではあるのだが、「……あめふらし。ああ、そう呼ばれている。……誰に。さあ、誰ともなく」。最後の「雨宿」に至るまで、誰が誰と話しているのか、それが何時なのか、掴まったタマシイの蛻がぼんやりと霧の中を行き来しているような奇妙さ。雨宿をしていきなさいと促された鷹司は返事をしたかどうかを憶えていない。何時までも何時までも続いていく…、

■浅田次郎氏の「あやし うらめし あな かなし」(双葉社、2006年7月5日第1刷発行)

Asada01「あめふらし」を読んで暫くしたところで、「あやし うらめし あな かなし」に出会う。「あめふらし」と交錯したかのような「虫篝」。津山久の人生は何処にあったのか。「骨の来歴」の吉永と佐知子は本当に存在しているのか。「客人」で「私、帰りたくないの」と広い座敷のあちこちから響もす声にぞっとしながら、「遠別離」で彷徨う矢野二等兵への「もう終わっているの」と云う言葉に走馬灯の淡い光を思う。休みに集まった子供らにせがまれた伯母の「こわい話」、「赤い絆」と「お狐様の話」が最初と最後に語られる。そのからくりのように立ち上がる伯母ははたして死んでいるのか生きているのかもわからない。すうっと傍らを過ぎていくような怖さをもつ「あめふらし」のあとに、人の情の青白い炎に背筋の寒くなるような本作品。奇っ怪な話が行き交うとき、何かが起きるのかもしれない。

【追記】昨年は6月18日に同じような紹介をしていた。「覘き小平治」他である。我ながら代わり映えのしないことで相済まぬことでござる。でも、今回は京極夏彦氏の作品は入っていない。最近では「今昔続百鬼 雲」(講談社文庫、2006年6月15日第1刷発行)を読んでいた。Kyougoku01この作品、妖怪らしきものが出てくるのであるが、妖怪研究家の多々良勝五郎先生がなァ。このセンセイは詰まると「ぬ」と云うのだ。何故「ぬ」か。連れの伝説蒐集家、沼上の「ぬ」なのである。「実験小説 ぬ」じゃあるまいし、背筋が寒くはなりませぬ(笑)。最後に京極堂も出てくるし、面白いことは間違いないのだが、ここで一緒に紹介する作品ではありませんでした。怖い作品だったら、入れてたな。

ところで、7月1日付日経朝刊の「私の履歴書」で小松左京氏が次のようなことを書いていたので紹介しよう。「同時受賞(注:「日本沈没」と同時)の短編部門が『日本以外全部沈没』だったので思わず吹き出した。悔しいことに、この作品、面白い。…(途中略)…。『日本以外全部沈没』も映画化が進んでいて、私にも出演依頼が舞い込んだが直ちに断った。…、出来が良すぎるパロディーを書かれた原作者は、いつまでも根に持つのである。」だそうだ。映画「日本以外全部沈没」については「6月検索キーワード」で紹介したが、原典の小松氏も褒めているようで(?)、やはり期待できるかな(笑)。

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Comments

♪dawnさん、こんばんは。
全作の「日本沈没」を見たのは、多分小学生の頃だったでしょうか?
リメイクされた今回の「日本沈没」はまだ見ていないのですが、「日本以外全部沈没」には笑いました、笑。

Posted by: あざらしサラダ | Aug 02, 2006 at 00:15

あざらしサラダさん、こんにちは。
今回の「日本沈没」はさて置き、「日本以外全部沈没」は筒井氏の原作だけあって、いやァ、ほんとにバカバカしくて…、世界中から苦情が来ないことを祈ります(笑)。dより

Posted by: dawn | Aug 02, 2006 at 18:37

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