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「図書室の海」

■恩田陸さんの「図書室の海」(新潮文庫、平成十七年七月一日発行)

昨日書きかけていたのだが、残念ながらタイムリミットでした。今日は、15分位あるので再チャレンジ。

先ほどまで(昨日の話)経済産業省の「知的財産の流通・流動化に係る制度的諸問題の調査研究会」に出ていた。知的財産権に於ける制度的課題とかライセンス契約上の課題に関する委員会である。確かに課題はたくさん残っている。しかし、着実に進みつつあることは間違いない。制度的問題はまだ残るものの、知的財産権の流動化は十分に機能すると言っていいだろう(制作者には相当な力になるだろう)。それにしても、数年前に通産省の別の研究会を企画した当時とは隔世の感がある。あの頃は見通しなんぞ全くたたない状況だったが、真剣に資料を作っていたのを思い出す。大変懐かしい気がする。懐かしいと言っても、この作品が醸し出す懐かしさとは相当違うけど(無理やりの導入、笑)。

onda01この作品は短編集である。でも、この短編がその後の物語を形作っていくと云う意味で非常に面白い(映画にもこう云う作り方があるのではないだろうか)。もちろん短編として読んでも十分に堪能できる。「懐かしさ」と云う強引な導入をしたが、実は「懐かしさ」は話の情景にあるのであって、内容はかなり夏向きである。夏向きと言いながら、まずは「春よ、こい」。déjà vu のようで、déjà vu ではない、その本質は「なんだか、おかしな感じ」を与えてくれる。これが、「茶色の小壜」になると、三保典子の奇妙な笑みに背筋が冷たくなる。

tosyokan01「イサオ・オサリヴァンを捜して」、「ある映画の記憶」、「国境の南」、「ノスタルジア」それぞれに、不思議な肌寒さを感じながらも、何故か心の底にしっくりと落ちてくるような不思議な感覚がするのは何故だろう。「真実の恐怖の始まり」に対してではないだろう。これが、「図書館の海」になると、本当に懐かしい気がする。「天井まで届く高い本棚」、「どことなくカビくさく、辛気臭い空気」、学生の頃のしんとした図書館、高い窓からもれてくる光のなかに舞う埃、いいなァ。図書館でよく眠っていたのを思い出す(笑)。これがStephen Kingの「Four Past Midnight(図書館警察)」だと、図書館嫌いの子が増えちゃうかな。

「オデュッセイア」では将来への漠とした不安が漂う。でも、「ココロコが、自分が動けることに気付いたのは随分昔のことである」から始まる物語には唯一の羅針盤たる希望をも感じる。私に理解し難いのは「睡蓮」。「リセハ、ゲンジモノガタリヲシッテイル?」。少女の気持ち(当然ながら女性もですが、笑)は、難し過ぎて解らない。「ピクニックの準備」については私が言うまでもない。「夜のピクニック」の予告編である。ひとつずつ性格の違う作品だが、読み終えるとどうしても自分の現在と過去、また現在と将来とが交錯するような気分にさせられる不思議な短編集である。

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Comments

本&なつかしさですが、以前dawnさんにうらやましがられたように、私の実家は本屋だったため、本に囲まれて育ちました。少年時代の懐かしいことといえば、少年が読んではいけない本の数々を読破したことですね。実に恵まれていました。(^^;

Posted by: 高円寺 | Jul 22, 2005 at 17:22

>「天井まで届く高い本棚」、「どことなくカビくさく、辛気臭い空気」学生の頃のしんとした図書館、高い窓からもれてくる光のなかに舞う埃!

あえてこれにつけくわえさせていただくなら!
「マジメな女の子のノートをテスト前にコピーするために1枚10円の複写機の前に行列するおばか学生」これぞ図書館。

個人的にいえば、これにくわえて「教授が課題図書に指定したために貸し出し制限が行われてしまい、その予約をめぐって司書さんの前で繰り広げられる血みどろの抗争」もはずせません。

そしてそういった俗悪なニンゲンどもを見下すかのように図書館入り口でお昼寝してるネコども!どうもやつら毛並みがよかったなと前々から不思議でしたが、最近あの図書館ネコどもの中にはキャンパス内にある教授宅で飼われているイエネコが多く含まれていることが判明しました!

教室で教授に怒られ、図書館前で教授のネコに馬鹿にされてたのか。。。ふんだりけったり。
(-_-;)

Posted by: koolpaw | Jul 22, 2005 at 20:22

dさん!
こんばんは♪

déjà vuの感覚、
先日お勧めいただいた「アフリカの爆弾」でも
味わいました!全く違う感覚だと思いますが(笑

恩田陸さん面白そうですね♪
今度読ませていただきますね(^0^)

Posted by: seiG | Jul 22, 2005 at 22:24

高円寺さん、こんにちは
本屋さんはいいですよね。私がやると、客そっちのけで本を読んでばかりいて商売にはならないような気もしますが(笑)。dより

Posted by: dawn | Jul 23, 2005 at 12:34

koolpawさん、こんにちは
図書館については色々なことを思い出しますね。それにしても、ネコにバカにされたくはないような(笑)。dより

Posted by: dawn | Jul 23, 2005 at 12:36

seiGさん、こんにちは
「アフリカの爆弾」も読まれたんですね。気に入って頂けたら良いのですが。
恩田陸さん、私も多くは読んでいないのですが、結構好いですよ。これもお勧めです。dより

Posted by: dawn | Jul 23, 2005 at 12:40

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