「ホーネット、飛翔せよ」
■Title: Hornet Flight(邦題「ホーネット、飛翔せよ」上・下) Author : Ken Follett (戸田裕之訳、ヴィレッジブック、2004年12月20日第1刷発行)
感じ方にも色々ある。最初の一文から魅了される場合もあれば、最初は取っ付き難いが途中から面白くなる場合など、様々だ。この本は後者の部類に入るだろう。実は宮城谷昌光氏の「晏子」(新潮社)もそうだった。2、3頁読んで、これには参ったと思い、半年ほど放置していたが、何とはなしに読んでみると、上巻の中程(新築の合戦辺り)からもう止められない気持ちになっていた。この本も、プロローグでエニグマ系のものなら他でも読んだなと思ってしまい(勘違い、笑)、あっちこっちと寄り道をしていた。
同じKen Follettでも、「Eye of The Needle(針の眼)」(The New American Library)だと、「It was the coldest winter for forty-five years.....」と云う出だしから既に何かを予感させるような気がした。我ながら、感じ方とは面白いものだと思う。いずれにせよ、スーッと引き込まれていくときの気持ちが堪りませんね。
さて、題名のホーネットだが、これはホーネット・モスと云う小型複葉機のことである。田舎の農場に置かれたホーネットの状況はと云うと「機はわずかに片側に傾いでいたが、見ると、片方の脚が傷み、タイヤの一つがぺちゃんこになっていた。胴体…それは何かの種類の布でできていて、ところどころに小さな裂け目やしわ…」と云う有様である。
主人公のハラルド・オルフセンも「機体の修理はさらに大事(おおごと)のように」思っていた。でもね、カレン・ダクウィッツに「できないんじゃないかしら。…」なんて言われると、「すぐにわかるさ」なんて応じて、修理しちゃうんだな。彼の性格に起因するところも大だが、愛することは素晴らしいもんですね。ナチスドイツに挑むデンマークの若い二人、無事、使命を果たすことが出来るのか。最初に私が感じたものとは全く趣を異にした話に、私の心は躍らされてしまった。
この作品は冒険小説として面白いのだが、様々なことを思い浮かべながら読んでも面白い。例えば、英国の動き等を見ていると、浅田彰氏の「ヘルメスの音楽」(ちくま学芸文庫)の「戦争は遊戯である。ゲーム、ではない。あくまでも遊戯である。」(戦争を茶化している訳ではありません)を思い出す。また、敵役のペーター・フレミング(デンマーク公安部の警部補、ナチスへの協力者)の心の動きを見ていると、Erich Frommの「Escape from freedom(自由からの逃走)」を改めて考えてしまう。
私も大空を飛んでみたいな。高所恐怖症だけどね。
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